バーの開業のための5つの準備
目次
バーはお酒を飲むという点では居酒屋と同じですが、バーにはおしゃれな雰囲気が求められ、お酒の種類もたくさん揃っていることが求められます。
本当にお酒を飲みたいと思う人が集まる場所、それがバーです。自分自身がお酒がとても好きで、いつか自分のバーを開きたいと思っている方も少なくないようです。
しかしバーを開業するためには、幅広いお酒に対する知識に加えて、バーを開くための手続きや経営能力も必要となります。バーを開業するための5つの準備についてご説明します。
準備1:どのようなバーを開業するか?
何となくバーを開業したいと考えただけで成功できるほど、世の中は甘くありません。どんな飲食店でも同じように、バーを開業する場合でも、開業に至るまでのプロセスが非常に重要になります。
バーの開業準備だけなら1ヶ月くらいあれば十分ですし、実際に営業を開始できる状態まで持っていけるでしょう。
しかし重要なのは、どれだけ早く開業するかではなく、どのようなバーを作り、どのように経営を行なっていくのかを考えることです。じっくりと考え、少なくとも開業の半年前から準備をスタートしましょう。
最初に行なうことは、自分のバーのイメージを確立するために、多くのバーに通うことです。自分のお気に入りのバーもあると思いますが、それ以外にも、普段あまり行かないようなバーにも行ってみましょう。
バーと一口に言っても、時代の変化と共に種類が増えています。専門的なお酒が集まるバー、音楽を楽しむバー、会話を楽しむバー、スポーツバー、夜景を楽しむバー、食事とお酒を楽しむバーなど多くの種類があります。
自分が始めたいと思っているバーは、どのようなタイプになるのか?ここをしっかりと決めないと、特徴のないバーになってしまいます。
そして開業するために、どのような備品が必要になるかも把握しておく必要があります。備品の数や種類に関しては、バーのジャンルによって異なりますが、おおよそ150種類ほどの備品が必要になるでしょう。
たとえばグラスだけでも、カクテルグラス、ビールグラス、ワイングラスの3種類は最低限必要です。加えて、シェーカー、ミキシンググラス、ストレーナー、ビールサーバー、バースプーン、製氷機、冷蔵庫、冷凍庫、コースター、灰皿などが必要です。
さらにバーを紹介するための名刺、ポップ、音響設備なども必要になってくるでしょう。
こうした備品の準備に加えて、バーの営業時間や定休日も決めておく必要があります。実際に出店する土地の状況を加味して決定することになりますので、平日や休日の人の流れを調査しなければなりません。
準備2:必要な資格・申請書・メニュー
どのようなバーを開業するかが決まれば、おのずと次の段階に進みます。自分が望むバーを開業するために必要な資格や、行政に提出する申請書類について知っておかなければなりません。
さらに希望するバーのタイプによって、お酒や料理のメニューも考案していかなければなりません。
バーを開業するために必要な資格は、食品衛生責任者と防火管理責任者の資格です。食品衛生責任者は、バーを開業する人が所有していなくても、店舗に1人資格を持った人がいれば大丈夫です。
食品衛生責任者の取得費用は約10,000円で、講義を1日受講すれば取得できるため、オーナー自身が取得した方が良いでしょう。仮に資格を持った人がお店を辞めた場合に、後でややこしくなるからです。
誤解されやすい資格としては調理師免許がありますが、バーを開業する時に調理師免許は必要ありません。
バーの開業にあたり、保健所にも営業許可申請を出さなければなりません。保健所に営業許可業種を確認し、保健所に事前相談、申請、施設確認、営業許可という流れになります。
食品衛生責任者の設置申請も役所に提出する必要があり、受け取った食品衛生責任者表を見えるところに掲示する義務もあります。
開業するバーの種類によっては、これに加えて風俗営業適正化法の規制対象になることもあるため、営業を行うためには警察署への申請も必要になります。
深夜0時以降の営業を行う場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を管轄の警察署に提出する必要があります。地域や状況によって申請の有無や内容が異なるため、警察署に行って相談しましょう。
届出場所 | 届出内容 |
---|---|
保健所 | 食品営業許可申請 |
消防署 | 防火管理者選任届、火を使用する設備等の設置届 |
警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 |
税務署 | 個人事業の開廃業等届出書 |
労働基準監督署 | (従業員を雇った場合)労災保険の加入手続き |
職安 | (従業員を雇った場合)雇用保険の加入手続き |
社会保険事務所 | 社会保険の加入手続き |
そして開業にあたり、事業計画書も作成する必要があります。事業計画書に含める内容は、バーを開業する目的、経営の経験、扱うメニュー、取引先の情報、開業に必要な資金、資金の調達方法、経営の見通しなどです。
この事業計画書が資金調達にも大きく影響を与えますので、自分が見て分かる事業計画書ではなく、第三者が見ても理解できる事業計画書を作成しなければなりません。
バーを経営する際の売上目標の目安は、バーの規模にもよりますが、一般的には営業3日間で家賃1ヶ月分を売り上げる程度が良いとされています。
準備3:開業するための資金調達
バーを開業して営業を続けていくためには、まとまった資金が必要になります。開業資金と運転資金を自己資金だけでまかなうことができれば良いですが、実際には金融機関からの借入が必要になるでしょう。
バーをどこで開業するのか、どれくらいの規模にするのか、バーの種類をどうするのかによって異なるものの、一般的なバーの開業資金の目安は500万円から1,000万円とされています。
資金の内容 | 目安の金額 |
---|---|
店舗の家賃 | 1坪2万円×15坪=家賃30万円 |
店舗の保証金 | 家賃×10ヶ月分=保証金300万円 |
店舗の工事費 | 坪単価30万円×15坪=450万円 |
ただしあくまでこれは開業資金であり、これに加えて運転資金が必要となります。ですから開業をする時には、開業資金と運転資金を合わせて1,000万円以上は準備しておくべきでしょう。
バーを含む飲食店を開業する時は、その1,000万円のうち、3分の1は自己資金で用意するべきとされています。そのため通常は、残りの3分の2を借入という形で準備することになります。
調達の方法 | 全体の割合 | 金額 |
---|---|---|
自己資金 | 3分の1 | 333万円 |
借入 | 3分の2 | 666万円 |
合計 | 1,000万円 |
バーを開業する時に、借入先として優先的に考えたいのは日本政策金融公庫です。実際にバーを開業する人のほとんどが、日本政策金融公庫から融資を受けて開業に至っているようです。
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、小規模の会社や個人経営の店舗を対象にしているため、仮に一般の金融機関で融資を断られた場合でも融資を受けられる可能性があります。
とはいえ実際に融資を受けるには、日本政策金融公庫の審査をクリアーしなければなりません。ここでポイントになるのが、実績よりも、どのような事業計画を持っているか、自己資金がどれくらいあるかという点です。
そして日本政策金融公庫に加えて、地方自治体や各都道府県、市町村でも、開業の融資を行なっています。自治体からの融資でも、同じように事業計画書に基づいて融資をするか判断するため、事業計画書は非常に重要になります。
ですから、きちんと時間をとって事業計画書を作成し、万全の事業計画書を準備するようにしましょう。
日本政策金融公庫の融資は、申込をしてから融資が実行されるまでに1ヶ月ほど時間がかかります。融資の手続きも複雑なため、事業計画書ができしだいすぐに申込を行うようにしましょう。
準備4:どこにバーを開業するか?
融資のめどが立ったら、次にバーを開業する場所を決めます。もちろん開業する場所は、準備できた資金の額も考慮する必要があるでしょう。
バーの経営が成功するかどうかは、お店の立地にかかっていると言っても過言ではありませんので、出店エリアの決定や物件探しには十分に時間をかけなければなりません。
物件を探す際に考えることは、人通りが多い場所、人が入りやすい場所など、人の流れを確認することです。週末に営業を行うなら、平日だけでなく、週末や休日の人の流れも確認しなければなりません。
バーは深夜の時間帯に営業する可能性も高いので、遅い時間帯の人の流れにも注意したいところです。
良さそうな物件が見つかったら、こうした情報を精査する必要があります。不動産屋と一緒に物件をまわっている場合は、良い物件が見つかるとすぐに契約するように迫られることもあります。
しかし、絶対に即決してはなりません。一度物件を決めてしまうと、後で物件を変更することは難しいです。もし物件を変更しなければならなくなった場合、何百万円ものお金が無駄になってしまいます。
店舗物件は仮押さえできないことも多く、すぐに契約しないと物件が流れてしまうケースも多いです。しかしそれでも、たとえ物件が流れたとしても、時間をかけて物件を探すことの方が何倍も大切です。
広い店舗にしたい場合は、駅前の立地の良い場所では家賃が高くなりますので、少し郊外に出店することも検討しましょう。お客様の数が欲しい場合は、狭くても駅前などの立地の良い場所を選びましょう。
物件を選ぶ時には、もう1点決めておくべきことがあります。それはスケルトン物件にするか、居抜き物件にするかということです。
スケルトン物件とは、店舗の床、壁、天井などの内装が一切行われていない物件です。スケルトン物件の場合、自分が理想とするバーの内装デザインにできる一方、工事費用が多くかかってしまいます。
居抜き物件とは、以前に同じ場所に飲食店があり、その飲食店の内装や設備がそのままになっている物件です。工事費用はスケルトン物件より抑えられますが、内装の自由度はかなり下がってしまいます。
ですから、店舗の内装デザインを重視するのか、工事費用を節約するのか、事前に決めておく必要があります。他にも仕入先の情報もきちんと整理をして、開業してから慌てないように準備しておきましょう。
準備5:お客様を集めるための工夫
いよいよバーの開業が決まったら、より多くのお客様に知ってもらうために宣伝を行わなければなりません。バーが流行るかどうかのポイントは、リピーターをどれくらい作れるかという点になります。
特に新規のお客様が来店した時に、他の客が全くいないと不安に感じる可能性があるため、最初は友人や知人に来てもらうようにすると良いでしょう。お店にリピーターがいるような雰囲気を出すこともできます。
それと同時に、今の時代はインターネットでの宣伝は必須となります。
最も重要なのは、バーをオープンする前から店舗のホームページを作成し、カウントダウンをすることです。お客様に期待してもらえるようなクオリティーの高いホームページが必要なので、プロに依頼するのも良いでしょう。
ホームページの内容は、店側の一方的な情報ではなく、お客様の求めることが反映されていなければなりません。どのような時間を過ごせるか、どのようなサービスを提供できるか、分かりやすく説明しましょう。
リピーターを作るには、開業当時の謙虚な心構えを忘れてはなりません。多くの人に支えられてお店を始められたこと、お客様への感謝の気持ち、サービスを改善する努力、こうしたものが揃ってこそリピーターができます。
バーのオーナーが暗くて、横柄なお店が流行るはずがありませんから、初心を忘れることだけは避けなければなりません。
まとめ
バーを開業するための5つの準備についてご説明しました。バーを開業する時は、少なくとも半年前から準備を始め、自分がどのようなバーを経営したいのかイメージをハッキリさせる必要があります。
バーを開業する前に取得しておくべき資格もありますので、初期段階で取得しておきましょう。バーは通常の飲食店とは異なり、必要な申請が多く、複雑な部分もあるため、事前に役所、保健所、警察署に相談しましょう。
開業資金と運転資金のうち、少なくとも3分の1は自己資金として準備しておくことも大切です。残りは借入となりますが、融資を受けるためには良い事業計画書が必要となるため、事業計画書は念入りに作成しましょう。
バーを長く営業していくには、絶対にリピーターが必要になります。お客様が求めるサービスを提供するために、日々サービスを改善する努力をして、楽しく繁盛するバーを作っていきましょう。
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