店舗内装工事の耐用年数はどれくらい?4つの勘定科目と減価償却の注意点
目次
店舗を開業する時に気になるのは、「内装工事の耐用年数とは?減価償却はどうすればいいか?勘定科目はどうなるのか?」ということではないでしょうか?
この記事を最後までお読みいただくことで、内装工事の耐用年数と減価償却の関係や、勘定科目の分け方について詳しくなれます。
当サイトは、2010年から数多くの店舗を工事しており、類似サイト以上に多くの知識と実績がありますので、ぜひ参考にしてください。
結論から言えば、耐用年数は自分で自由に決められず、費用を耐用年数で割ったものを減価償却します。一言では難しいと思いますので、以下で詳しく見ていきましょう。
店舗の内装工事費用は耐用年数で減価償却できる
店舗の内装工事にかかった費用は、減価償却できるのでしょうか?
答えとしては、基本的に一時的な損金(経費)としては認められません。店舗の内装工事にかかった費用は、減価償却として、毎年の損金(経費)に計上されることになります。
・設備/器具の費用÷耐用年数=1年の減価償却額
年間の売り上げ金額によって消費税が免除されたり、税金の納付額が数百万円単位で変わったりしますので、開業前から相談できる税理士を見つけておいた方がよいでしょう。
税理士は資金繰りの問題はもちろん、税金を安く済ませるための節税方法や、適切な利益が出ているかなどもアドバイスしてくれます。税務署の無料相談もありますので、管轄する税務署に聞いてみるのもよいでしょう。
店舗内装工事の耐用年数とは?
店舗の内装工事にかかった費用は、その年に全額を計上するのではなく、耐用年数によって分割して費用に計上します。いわゆる減価償却と呼ばれるものです。
耐用年数がどのくらいかは非常に重要ですから、耐用年数についてしっかり把握しておくようにしましょう。本章では、以下の観点から店舗内装工事の耐用年数を解説します。
- 耐用年数は自分で決められない
- 該当する建物の構造による違い
- 使用する設備や器具による違い
それでは、詳しく見ていきましょう。
耐用年数は自分で決められない
まず大事なこととして、耐用年数というのは、自分で自由に決められるものではありません。もし耐用年数を自由に決められてしまえば、毎年計上する費用を自由に操作でき、問題が生じてしまうからです。
耐用年数は、建物の構造や利用目的などによってそれぞれ決められています。基本的には決められた耐用年数をそのまま使って、費用を計上します。
たとえば、ある建物を2,000万円で手に入れて、その建物の耐用年数が20年だったとします。この場合、2,000万円を20年で分割して費用を計上するので、毎年の計上する費用は100万円というわけです。
つまり、その年に利益がたくさん出たからといって、1年で一気に高額の費用を計上することはできず、耐用年数で割って費用を計上する決まりになっています。
1年に高額の費用を計上する必要がなくなるのはメリットですが、毎年一定の費用を計上するのはデメリットにもなり得ます。バランスを上手に考えることがポイントでしょう。
該当する建物の構造による違い
該当する建物の違いによっても、耐用年数は違ってきます。木造の建物の場合は、耐用年数が以下のように変化します。
- 飲食店用・店舗用・住宅用として使う場合:22年
- 病院用・車庫用として使う場合:17年
同じ建物でも、どんな目的で使うかで耐用年数が変化するのが特徴的です。鉄筋コンクリート造の場合は、飲食店なら34年、もしくは41年になります。
その建物をどうやって使うのか、どんな造りになっているのかは、耐用年数を左右する重要な要素です。あらかじめ知っておけば、耐用年数を見積もりできるため、毎年かかる費用もある程度計算できます。
使用する設備や器具による違い
建物だけでなく、その中で使用する設備や器具によっても、耐用年数は違ってきます。
店舗で必要になるケースが多い接客用の椅子は耐用年数が15年です。接客用ではないものは、5〜8年など10年に満たないことがほとんどです。
同じようなものでも、用途によって耐用年数が変わることがあるので注意しましょう。
同じように、各種設備にもそれぞれ耐用年数が設定されていて、それを利用して耐用年数を見積もりします。
耐用年数を知らないと、費用の計上や見積もりが難しいので、まずは耐用年数が何年なのかを調べる必要があります。
店舗内装における耐用年数と減価償却の関係
店舗の内装工事にかかる費用の耐用年数は、減価償却にかかる期間と深い関係にあります。しっかり理解していないと、毎年の費用がわからなくなったり、計上したことで赤字になってしまうこともあります。
- 耐用年数と減価償却とは?
- 減価償却は慎重に計上する
耐用年数と減価償却の関係について、しっかりとポイントを押さえておきましょう。
耐用年数と減価償却とは?
耐用年数とは、対象物の寿命のようなイメージです。寿命というと壊れるまでの期間というイメージを抱いてしまいますが、耐用年数は物理的な寿命ではなく、経済的価値の寿命といった方が正しいでしょう。
たとえば、耐用年数が10年なら、10年間は経済的価値が維持されます。
そして減価償却とは、内装工事や設備にかかった費用を1年で全額計上するのではなく、複数年に分割して計上する処理方法のことを指します。減価償却期間が10年なら、かかった費用を10年で分割して計上するわけです。
何年で分割するかが重要なのですが、分割年数には耐用年数がそのまま適用されます。つまり、耐用年数が10年なら、減価償却期間も10年です。
減価償却は慎重に計上する
高額になる内装工事や設備の費用を、耐用年数で分割して計上できるのは、一見するとメリットのように思えます。しかし、減価償却がデメリットになる可能性も、あらかじめ考慮しておかないといけません。
費用を分割するということは、毎年一定額の支出が無条件で生まれることになります。つまり、減価償却を計上することで、黒字だったはずの決算が赤字になってしまう可能性もあるのです。
年間に数百万円単位の減価償却が出ることは決して珍しくないので、注意しなければいけません。
税理士にも相談しながら減価償却について考え、決算時に急に赤字にならないように処理することがポイントです。
【国税庁】店舗内装の耐用年数
耐用年数については、国税庁のホームページにも詳しく掲載されていますが、以下に該当部分を抜粋して記載します。
- 建物附属設備の耐用年数
- 店舗内装関連の備品類の耐用年数
- 他人の建物に対する造作の耐用年数
- 賃借資産についての改良費の耐用年数
耐用年数を把握することが、正しい減価償却の第一歩です。
建物附属設備の耐用年数
主な建物附属設備の耐用年数は、以下の通りです。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
アーケード・日よけ設備 | 主に金属製のもの その他のもの | 15年 8年 |
店用簡易装備 | 3年 | |
電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備 その他のもの | 6年 15年 |
給排水・衛生設備・ガス設備 | 15年 |
店舗内装関連の備品類の耐用年数
主な店舗内装関連の備品類の耐用年数は、以下の通りです。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
家具・電気機器・ガス機器・家庭用品(他に掲げてあるものを除く) | 冷房用・暖房用機器 電気・ガス機器 氷冷蔵庫・冷蔵ストッカー(電気式を除く) | 6年 6年 4年 |
事務機器・通信機器 | インターホン パーソナルコンピュータ(サーバー用を除く) | 6年 4年 |
時計・試験機器・測定機器 | 時計 | 10年 |
光学機器・写真製作機器 | カメラ・映画撮影機・映写機・望遠鏡 | 5年 |
看板・広告器具 | 看板・サイン・気球 マネキン人形・模型 | 3年 2年 |
容器・金庫 | 手さげ金庫 その他金庫 | 5年 20年 |
理容・美容機器 | 5年 |
他人の建物に対する造作の耐用年数
法人が建物を賃借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。
ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。
(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。
賃借資産についての改良費の耐用年数
法人が使用する他人の減価償却資産(1-1-3によるものを除く。)につき支出した資本的支出の金額は、当該減価償却資産の耐用年数により償却する。
この場合において、1-1-3のただし書の取扱いを準用する。
店舗の内装工事費用における主な4つの勘定科目
本章では、店舗の内装工事費用における主な4つの勘定科目を解説します。
- 建物
- 建物付属設備
- 備品
- 諸経費
経営に関する知識の中でも、勘定科目は非常に難解な部類です。内装工事の仕分けにおける勘定科目は、大きくわけて4種類となっており、建物と建物付属設備は別枠になっています。
上記2種類の他には、家具や消耗品があてはまる備品、デザイン費用や人件費といった物が諸経費という分け方です。下記で、詳しく解説します。
建物
建物の勘定科目は、店舗建設にかかった費用を計上する項目です。
建物の勘定科目を内装工事で使用するケースは少ないでしょう。理由として、建物に仕訳するのは新築の不動産に限られるためです。
具体的には、以下の工事が建物の勘定科目に該当します。
- 造作工事
- 木工工事
- ガラス工事
- 防水工事
建物付属設備
建物付属設備は、店舗の内装工事でメインに使用する勘定科目です。
給排水や冷暖房、ボイラーなどの設備は、建物付属設備に当てはまります。火災や防災の時に役立つ格納式避難設備もここにあてはまり、自動防火シャッターも該当します。
分かりづらいですが、折たたみ式のはしごやマンションなどに付属している救助袋は、備品扱いです。機械が自動で動かすものは建物付属設備、それ以外は備品と覚えると分かりやすいでしょう。
備品
先述したように、業務に必要な自動で動かないものは、おおよそ備品に分類されます。具体的な備品の例は、以下の通りです。
- 家具
- 電話機やパソコン
備品と建物附属設備の分類には専門知識が必要ですが、大まかな分類方法を勉強しておいて損はありません。しかし、備品として計上するためには20万円以上でなければならないので、事前に値段を把握しておきましょう。
諸経費
諸経費の勘定科目は、主要な工事費用と別に発生するさまざまな費用を指します。具体的な諸経費の例は、以下の通りです。
- 人件費
- デザイン費用
- 工事に必要な各種手続き費用
諸経費を正しく把握するためには、施工業者に明細をだしてもらうのがおすすめです。
店舗の内装工事費用を仕分けするコツとは?
仕分けの簡単なコツとしては、いきなりすべてを4種類の項目に分類するのではなく、まず建物付属設備からピックアップして分類しましょう。
建物付属設備は1番頭を悩ませる部分なので、最初に仕分けしておけば、後々の作業が楽になり格段に手間が減ります。
2. その後に他の3種類の項目を分類
特にパーテーションは厄介で、天井につくかどうかで基準が変わるので、最初に背が高い物を分けましょう。スライド式のパーテーションは建物に分類されるので、最初に分けておけば後で楽になります。
勘定科目は覚えることが多く、分類も細かいので悩む方が多いです。余裕があればお金を払って税理士に依頼し、自分は売り上げを上げるための業務に集中する方がベターでしょう。
もし自分で帳簿を付けて仕分けを行う場合は、事前に何がどの勘定科目に当てはまるのかを、しっかりとチェックしてから工事にとりかかるようにしてください。
店舗の内装工事費用を減価償却する3つの注意点
最後に、店舗内装費用を減価償却する際の3つの注意点を詳しく解説します。
- 改修工事の扱い
- 原状回復工事の扱い
- 償却開始時期と取得価格は正確に把握する
それでは、詳しく解説します。
改修工事の扱い
改修工事とは、建物の価値や機能を向上させるための工事を指します。取り扱い方法としては、資産として計上する場合と必要経費として計上する場合があります。
- 資産に計上するケース:固定資産の価値や耐久性を向上させる場合の工事
- 必要経費に計上するケース:維持管理や原状回復を目的にした工事
資産として計上する具体例には、より性能の高い機械への交換や避難階段の設置などがあります。一方、必要経費として計上する具体例には、機械の移設や建物の解体移設などが含まれます。
改修工事の内容に応じて、法令解釈が異なる場合があるため、注意が必要です。
原状回復工事の扱い
原状回復工事とは、建物を入居当初の状態に戻すための工事を指します。基本的には、修繕費として必要経費に計上可能です。
仕訳を行う際には、原状回復工事の費用であることを明記しないと、計上が認められない場合があるため、注意が必要です。
償却開始時期と取得価格は正確に把握する
店舗内装費用を減価償却する際には、取得価格と償却開始時期を正確に把握することが重要です。
取得価格と償却開始時期を正確に把握できないと、減価償却費の計算が正確にできなくなる恐れがあります。
取得価格には、設計費や施工費用に加えて、機械の移設や解体費用なども含まれるため注意が必要です。正確に把握するためには、施工会社からの請求書をきちんと保管しましょう。
また、償却開始時期は通常、内装工事完了後となるため、忘れずに把握しておく必要があります。
店舗内装の耐用年数は適切に把握しておこう!
ここまで、内装工事の耐用年数と減価償却の関係や、勘定科目の分け方について解説してきました。
こちらの記事で、耐用年数と減価償却のルールを知り、減価償却の計算方法や仕分けのポイントも知れたと思います。こちらの情報を参考にして、理想のお店が完成することを願っています。
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