店舗の開業で公庫融資や銀行融資を受けるコツ
目次
店舗を開業する際によく相談を受けるのが、「どうしたら、公庫や銀行などの金融機関から上手く融資を受けられるか?」ということです。
いくら良い物件を探すことができても、開業資金の目途が立たなければ話が前に進みません。今の時代、自己資金だけで出店するのは珍しいことですから、金融機関から融資を受けるのは当然でしょう。
この記事を最後までお読みいただくことで、公庫や銀行などの金融機関から融資を受けるコツを知ることができます。
当サイトは、2010年から数多くの店舗を工事しており、類似サイト以上に多くの知識と実績がありますので、ぜひ参考にしてください。
結論から言えば、公庫か、銀行などの民間金融機関かによって、融資を受けるためのコツは少し変わってきます。
開業する際の融資金額の目安は?
自分の予算に限界があっても、融資を受ければ開業資金を確保することができます。開業で予算を削りすぎては、営業を軌道に乗せるのも難しくなってしまいます。とはいえ、融資に頼り過ぎると返済に困ってしまいます。
融資制度を上手く利用して、無理のない範囲で開業資金を確保するために、お店を軌道に乗せるまでに必要な融資金額の目安を把握しておきましょう。
開業資金に利用できる融資先
店舗物件の確保から内装工事、厨房機器や備品の準備など、開業するまでの費用だけでも数百万円~1000万円以上かかることが多いですが、さらに営業を軌道に乗せるまでの数か月間の資金も確保しておかなければなりません。
その予算をすべて自分の貯金から出せれば良いのですが、そういう恵まれた方はほとんどいませんので、資金が足りない場合は多くの方が融資制度を利用します。
主な融資先は、日本政策金融公庫と各地方自治体の2つとなります。
銀行や民間金融機関からも融資を受けることはできますが、審査が通りやすく低金利というメリットから、日本政策金融公庫や各地方自治体を選択するのが一般的です。
融資を受けるには信頼性が重要
融資を受けるためには、明確な希望金額を提示しなくてはいけません。
店舗物件の確保と賃貸にかかる費用、準備、運転資金など、開業にかかる費用をすべて融資先に伝え、どれだけの金額が必要で、そのうちどれだけの金額を融資してもらいたいかを説明しましょう。
審査が通りやすく低金利とはいえ、融資先も返済が期待できない相手にはお金を貸してくれません。ですから、自分が払える金額やかかる金額を十分に把握して、融資金額を考えなくてはいけません。
金額を下げれば融資を受けられやすいとは考えず、信頼性の高い事業計画を作成して、妥当と思われる融資金額を提示するようにしましょう。
開業資金における融資の割合
自分の予算と融資を合わせて開業する場合、どれくらいの割合を融資に頼るべきでしょうか?
融資の割合を増やせば現状の負担は少なくなりますが、返済金が増えます。もし何らかのトラブルで営業を軌道に乗せるまでに時間がかかれば、返済が困難になりますから、融資に頼りすぎるのは危険です。
一般的には、開業資金の50%と、営業を軌道に乗せるまでにかかる運営資金の50%を合わせた金額が、融資の割合の目安です。
つまり開業に1,000万円かかるとしたら500万円を融資で、軌道に乗せられるまでの期間を4か月としたら2か月分を融資で、と考えて計算してみましょう。
公庫から融資を受ける場合
公庫などの公的な金融機関から融資を受ける際に、必ず確認されるのが自己資金です。具体的には、以下の2点を明らかにしなければなりません。
- 自己資金がいくらあるのか?
- どうやって自己資金を融通したのか?
現金として銀行口座に入金されていることが基本ですが、見せ金で良い場合もあります。たんす預金で賄った、親から借りた、スポンサーに出してもらったなど、理由は何でも構いませんので、金額と工面した方法が明確に示しましょう。
では、ある程度の自己資金があったとして、いくらぐらいまで融資してもらえるのでしょうか?基本的には、自己資金と同額までが、融資の限度額と考えておくと良いでしょう。
日本政策金融公庫(旧:国民生活金融公庫)には、自己資金と同額まで融資してくれる制度があります。たとえば、500万円の自己資金があれば、融資額も500万円ですから、資金総額は1,000万円という計算になります。
また日本政策金融公庫の場合、経験が担保になり、同業種の開業には500万円まで融資してくれる制度もあります。つまり、スタッフでも良いので、飲食店での勤務経験があれば、飲食店を開業するために500万円は貸してもらえるということです。
日本政策金融公庫には、この他にも様々な融資制度があります。詳しくはホームページにも掲載されていますので、ぜひ研究してみて下さい。
公庫は審査が通りやすく金利も低い
日本政策金融公庫から融資を受けることを、公庫融資と言います。公庫融資にはメリットがたくさんあるため、公庫融資を受けたい人はたくさんいます。
銀行等の民間金融機関から融資を受けることが難しくても、公庫融資であれば融資を受けられるケースも多いです。
日本政策金融公庫は、元々中小企業や個人事業者に融資することを目的に設立されたので、これから開業を考えている人にとっては強い味方となります。さらに、金利が低い点もうれしいですね。
自己資金だけで開業したり、金利が高い金融機関から融資を受けて開業するよりも、公庫融資を利用する方が圧倒的に負担が少なくなります。
公庫融資はどんなメリットがある?
公庫融資が店舗の開業に適している理由は、資金調達のしやすさ以外にもあります。公庫融資は金利が低い点と、借入期間が長くて長期の返済計画を組める点がメリットです。
さらに資金調達で最も苦しむポイントとなる、保証人と担保を用意する必要がありません。公庫融資は無担保無保証で借入を行えるため、家族や友人を巻き込むこともありません。
- 公庫融資は借入金利が低い
- 公庫融資は借入期間が長い
- 公庫融資は無担保無保証で借入できる
他にも細かいところでは、専門家が事務手続きなどを代行してくれるサポートもあるので、必要な方は検討してみましょう。
公庫の中小企業経営力強化資金
公庫融資の中に中小企業経営力強化資金というものがあり、その名の通り中小企業の味方をしてくれる制度です。別に新創業融資制度というものもありますが、それより金利が低くなっています。
中小企業経営力強化資金のメリットは、開業準備を行う多忙な経営者のことを考慮しているため、一度も金融機関にいかなくても融資を受けられる点です。
認定経営革新等支援機関の専門家が代行してくれるため、金融機関まで足を運ぶ必要がないのです。簡単に言えば、信用できる人が変わりに金融機関に行ってくれるということですね。
さらに融資面談の際に専門家を同席させることもできるので、専門家がフォローしてくれる場合もあります。かゆい所に手が届く、非常にうれしい制度ですね。
公庫の審査に通らない人も多い?
いくら公庫融資は審査が通りやすいといっても、実際は公庫融資の審査を通らない人もかなり多いです。その明暗を分けるポイントは、しっかりと事前準備をしておくかどうかです。
知り合いから聞いた通りに話した、公庫融資を受けたいから訪ねたなど、こんな単純な動機では当然融資を受けられるはずはありません。
開業するわけですから、明確な事業計画書を準備し、どれだけの熱意があるかをしっかりと伝えましょう。口答だけでなく、事業計画書を持参し、細かく説明することで信用してもらえるようになります。
公庫融資は元々国民の税金なので、熱意がない人や何となく開業したいという人に、簡単に貸すわけにはいかないのです。
他にも公庫融資には、無担保無保証でも借りられるというメリットがあります。多くのメリットがある公庫融資ですから、事業計画と返済計画を入念に準備して、確実に融資を受けられるように挑みましょう。
公庫融資と銀行融資はどちらが良い?
融資を受けることを考えた時、ほとんどの方は、まず銀行からの融資を考えるのではないでしょうか?
しかし銀行の融資は、独立開業したばかりの方やこれから開業する方にとっては非常に厳しいです。これまでの経歴や勤務経験によっては融資を受けられる可能性もありますが、可能性はかなり低いです。
それに対して公庫融資は、元々の設立目的が中小企業や個人事業の支援なので、独立開業したばかりの方やこれから開業する方でも融資が受けやすいのです。
・銀行融資は独立開業では審査が通りにくい
美容師は独立して一人前という考えも強いですから、開業資金を調達しやすい公庫融資は非常に助かりますね。
最後にまとめると、どちらが良い?
一概に公庫融資と銀行融資のどちらが良いと言うのは難しいですが、1店舗目であれば確実に公庫融資が向いています。銀行融資と比べて手続きも少なく、金利も低いので、いろいろな面で負担が減ります。
ただし政府系金融機関であるため、申込を1度断られると、1年程度は再申込ができません。最初にしっかりと事業計画書作り、入念な準備をしてから審査に挑みましょう。
開業する一歩手前まできて、融資の審査が不可となっては元も子もありません。
1店舗目の開業であれば、やはり公庫融資が適しており、公庫融資には様々なメリットがあります。公庫融資の審査に確実に通るように、万全の体制で挑みましょう。
銀行から融資を受ける場合
もちろん、銀行から融資を受けることもできます。日本政策金融公庫に貸し渋りの傾向がある場合は、銀行で融資を考えるケースも多いでしょう。銀行の場合、自己資金も去ることながら、重視されるのは事業計画です。
立地条件、見込み客数、想定客単価などから、実現可能な売上目標を設定しましょう。その売上目標の7~8割の売上で、設備投資、原価、家賃、人件費などの諸経費を支払えることを示し、さらに返済の収支計画を明確にしましょう。
売上目標が年々アップして、なおかつ売上目標の7~8割の売上で成立する返済計画を示すというのがポイントで、そこが銀行が融資の可否を判断する基準になっているようです。
現実的に目標が100%達成することは少ないので、100%で返済計画を考えていると、なかなか融資の決裁がおりません。細かい融資条件などは、こちらの全国銀行協会のホームページに載っています。
現役の銀行員の方が運営しているこちらのサイトも、融資関連の情報を網羅しており、Q&Aも充実しているので参考になるでしょう。
地方銀行や信用金庫の制度融資
地方銀行や信用金庫には、保証協会付制度融資というものがあります。多くの業界で利用されている制度なので、単語を聞いたことがある方も多いと思いますが、この制度には落とし穴があります。
それは融資までのスピードが遅く、開業の際に利用する場合は注意が必要だという点です。必要な書類を準備する手間がかかり、審査結果が出るまでに2か月もかかる場合もあります。
地方銀行や信用金庫の融資を考えている方は、この審査にかかる期間をしっかりと覚えておきましょう。
銀行融資を受ける際のポイント
銀行からの融資を受ける際は、特に2種類の項目が重視されます。1つ目は、自己資金をどれくらい用意できるか、どれくらい融資が必要かという点です。
しかし最も大切なのは2つ目で、開業する店舗の事業計画書です。事業計画書は立地条件に始まり、見込めるお客様の数、さらにメニューや想定する客単価などをまとめる必要があります。
「だいたいこれくらいの売上になると思うから、500万円を融資してほしい」というように、そんな甘い事業計画を持参して交渉をしても、どの銀行も融資してくれません。
銀行に具体的な数字を示すためには、まず実現可能な売上目標を立て、その売上目標の7~8割でも銀行への返済ができるように、必要な経費や収支を計算することがポイントです。
- 実現可能な売上目標を立てる
- 売上目標の7~8割で返済計画を組む
現実的な売上目標を立てていて、しっかりと返済のことを考えていて、計画から見ても返済の見込みがあると思ってもらえれば、銀行も融資に対して積極的になってくれるでしょう。
自己資金はなるべく多く用意する
店舗の開業には、自己資金をどれだけ用意できるかが大切です。自己資金は自分で用意したお金はもちろん、親戚や友人から援助してもらう資金も含まれます。
自己資金が多いほど銀行からの借入額は減り、返済額も少なくてすみます。返済額が少なければ完済の見込みも高まりますし、多くの自己資金を用意したことが信用にもつながります。
こういった理由で銀行も融資を快諾しやすくなり、スムーズに融資が下りるようになります。
充実した事業計画書を添える
銀行で融資を受ける際に、ただ融資の申込用紙に記入するだけでは、融資を受けられる可能性は限りなく低いです。
上記の内容を満たした、返済計画までしっかりと記載された事業計画書を作成し、一緒に提出することが重要です。相手に言われてから出すのと、自分から率先して出すのでは、相手の印象はかなり違います。
事業計画書には、経営者としての理念や自己紹介なども記載し、開業する店舗のコンセプトや方針も記載しましょう。考えているメニューや金額、その店舗に対する熱意も伝えたいですね。
- 事業計画書には理念や自己紹介を記載
- 事業計画書にはお店のコンセプトを記載
- 事業計画書にはメニューや金額を記載
- 事業計画書には熱意や想いを記載
- 言われる前に自分から率先して出す
融資担当者はただ数字を見ているのではなく、開業する方の熱意や人柄を見るとともに、計画の実現性や具体性を見ています。本番での武器に変えられるように、事前にしっかりと準備しましょう。
自分の経験をしっかりと伝える
今まで経験を積んできた年数も大切で、ベテランであればあるほど信用につながります。実績や経験は自己資金と並ぶくらい大切であり、特に美容師のような技術が必要な職業であればなおさらです。
さらに今までどんな経験をしてきたのかも、重要なポイントです。接客や技術はもちろんですが、これからは経営者になるわけですから、経営にいかせる経験があれば評価がプラスになります。
金銭管理やスケジュール管理など、いろいろな経験が生かせるので、独立前から少しでも評価につながる経験をしておきましょう。
個人信用情報をクリーンにする
これは経営者であれば絶対に必要な条件ですが、個人信用情報がクリーンな状態でないといけません。
個人信用情報がクリーンである条件は、過去5年以内に債務整理を行っていないことや、2年以内に消費者金融から借入をしていないことなど様々です。
公共料金の支払いに滞納がないか、税金や年金の支払いに滞納がないかなどもポイントになり、金銭の信用問題は非常にシビアなものとなっています。
多額のお金を借りようとしているわけですから、返済能力や責任感が無いと見なされてしまえば、当然融資してもらえません。お金の管理やお金に対する責任感は、経営者として大切な要素です。
- 5年以内に債務整理していない
- 2年以内に消費者金融から借入していない
- 公共料金の支払いに滞納がない
- 税金や年金の支払いに滞納がない
- お金に対する責任感を見ている
もし上記のいずれかに心当たりがあれば、すぐに融資を申し込まず、まず個人信用情報をきれいにして、少し時間を置いてから融資を申し込むようにしましょう。
開業したいと思ってもすぐにできないのが、経営の難しいところです。この機会に一度自分の状況を確認してみましょう。
事業計画の重要性
事業計画が大切なのは、公庫でも銀行などの民間金融機関でも同じです。融資の申込をする時は、融資の申込用紙に記入するだけでなく、必ず返済計画まで盛り込んだ事業計画書を添えましょう。
- 経営者としての自己紹介
- お店のコンセプトや営業方針
- お店のメニューと料金
- お店に対する思い入れ
- 売上目標の7~8割で返済計画
上記を簡単にまとめた「お店のプロフィール」を渡せば、融資の決裁が有利になることは間違いありません。売上目標や返済計画を示すことも重要ですが、融資担当者は何よりあなたの人柄や情熱を見ているのです。
まとめ
ここまで、店舗の開業資金を確保するために重要となる、公庫融資や銀行融資を受けるコツについて解説してきました。
こちらの記事で、公庫や銀行から融資を受けるコツを知り、それぞれの融資のメリット・デメリットも知ることができたと思います。こちらの情報を参考にして、理想のお店を開業されることを願っています。
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