整骨院の開業のための6つの準備
目次
店舗を開業する時には多くの準備が必要ですが、それは整骨院を開業する時でも同じです。基本的に整骨院は、他の業種よりも必要になるものが少ないですが、それでもやはり準備は欠かせません。
整骨院がたくさんある現状では、しっかりと準備を行わなければ、良いスタートは切れません。整骨院を開業する時にどのように準備を進めれば良いのか、また事前に決めておきたい点を見ていきましょう。
準備1:整骨院のコンセプトを決める
まずは整骨院のコンセプトを決めていきます。整骨院を経営するにあたっての理念とも言えますが、開業にあたりコンセプトは重要です。
独自のコンセプトは、他の整骨院とは違った特徴を作る要素にもなります。コンセプトをしっかりと決めて、コンセプトに合わせて経営することで、他の整骨院と差別化することができます。
コンセプトの他にも、開業前に以下の点を決める必要があります。
よくある院名を避ける
整骨院の名前を決定する時は、よくある名前は避けましょう。どこの整骨院でもありそうな名前というものがありますが、そうではない独自の名前を付けましょう。
これは、インターネットのホームページを作成した際に、検索結果に分かりやすく表示されるために大切です。同じような名前の整骨院が何件も検索結果に出てくると、どの整骨院にするか迷ってしまいます。
分かりやすく、かつ親しみやすい名前を考えておきましょう。
保険診療か自費診療か
整骨院は、保険診療、自費診療のどちらも行なうことが可能です。もし今どこかの整骨院で働いていて、これから独立して開業するのであれば、保険診療のみでの経営は避けた方が良いでしょう。
なぜなら、すでに長年やってきている整骨院と、これから開業する整骨院とでは背景が異なります。さらに新規の患者さんを獲得するのは、思っているよりも難しいと考えておきましょう。
単価の高い自費診療を打ち出して経営していくのが、無難な選択だといえます。外傷患者がどれほどいて、保険診療がどれほど見込めるのかを考えておくと、保険診療か自費診療か決めるのに役立ちます。
保険診療 | 自由診療 | |
---|---|---|
治療者 | 国家資格を持った医療者に限る | 資格を持っていなくても治療できる |
治療内容 | 適用範囲が非常に限られている | 患者さんの要望に応えて施術できる |
メリット | 安く治療を受けることができる | 質の高い治療を受けることができる |
デメリット | 対症療法になるため良くなりにくい | 患者さんの費用の負担が大きくなる |
これらのコンセプトと診療方法を決めたら、開業時期を決めていきましょう。開業時期を自分で決定し、その時期に合わせて準備を進めていくとスムーズです。
だいたいこれぐらいの時期に開業するという決め方では、オープンまでの時間が足りなくなってしまう可能性もあります。この日にオープンさせるという固い決意は、数多くある準備をこなす動機にもなります。
準備2:整骨院に適した物件探しと資金調達
以前であれば、整骨院を開業するのに、立地条件は考えなくても良いと思われていたかもしれません。しかし、競合する整骨院がたくさんある今は、立地条件を考えて開業しなければなりません。
さらに開業のための資金調達も、この段階からスタートさせましょう。
宣伝効果を考える
物件を探す際は、宣伝効果がある位置に存在するかを考えましょう。たとえば、1階の物件は人の目に留まりやすい位置にありますが、2階の物件はチラシなどで宣伝しないと、なかなか人の目に留まりません。
人の視界は限られているので、2階以上の物件の場合は、1階の物件よりも宣伝にお金をかける必要があります。2階以上の物件の方が賃料が安いので、そういったメリットも合わせて考えましょう。
融資を受ける方法
通常のマンションなどの賃貸より、店舗物件の契約には多くの費用がかかります。通常は保証金、敷金、礼金として、最初に家賃の10か月分ほどかかるため、整骨院の開業には数百万円から1,000万円の資金が必要になります。
資金の内容 | 目安の金額 |
---|---|
店舗の家賃 | 1坪2万円×15坪=家賃30万円 |
店舗の保証金 | 家賃×10ヶ月分=保証金300万円 |
店舗の工事費 | 坪単価20万円×15坪=300万円 |
もちろん開業を考えているのであれば、勤務時から少しずつお金を貯めて、自己資金を増やそうと考えていると思います。
しかし、すべての開業資金を自分の貯蓄だけで補うのは、現実的には少し難しいでしょう。多くの方が、自己資金で足りない部分を金融機関から融資を受けて補ったり、治療機器をリースにしたりしています。
比較的融資を受けやすいのは日本政策金融公庫ですが、地方自治体と金融機関が協調している融資制度も利用できます。いずれにしても、金融機関がお金を貸しても良いと感じるように、しっかりとした事業計画書を準備しましょう。
物件と融資が決まれば、開業までの道のりはさらに進んでいきます。この2つが開業前の最も重要なポイントですから、ここまで来れば残りの準備もあと一息です。
準備3:整骨院の開業に必要な資格と備品
整骨院の開業に際して、必要になる資格は柔道整復師の国家資格です。柔道整復師の国家資格を取得するために、3年間専門学校に通い、1年に1回の国家資格に合格する必要があります。
国家資格の合格率は毎年変化しますが、おおよそ65%の合格率です。基本的に暗記をする試験なので、勉強すれば合格できない資格ではありません。
柔道整復師の国家資格を取得するには、専門学校に通わなければいけないので、今就職している方は、計画的に準備して専門学校に通わなければなりません。
資格をクリアした後に考えなければならないのは、備品の購入です。整骨院を開業する際に必要になる備品は、おおよそ以下の通りです。
以上の物があれば治療は進められますが、もちろん整骨院の治療のコンセプトによっては、さらに必要な備品が増えます。
上記の様な備品をどこで買えば良いのか、頭を悩ますのではないでしょうか?これから営業していく過程で、何回も買うことになる消耗品もありますが、どのメーカーの物を買えば良いか分からないものです。
自分でインターネットでも購入できますが、コンサルティング会社を通す方法もあります。コンサルティング会社であれば、取引のあるメーカーを紹介してくれますし、インターネットより強いつながりができます。
アフターフォローも期待できますので、必要な物をリストアップして、コンサルティング会社に相談しても解決できるでしょう。
また、整骨院を開業するには、レセプト会社と契約したり、管轄の保健所に施術所の開設を届け出る必要があります。以下の届け出に必要な書類と合わせて提出し、保健所の承認を受けます。
レセプト会社は保険請求を代行してくれる会社で、面倒な手続きを代わりに行ってくれるため、活用している方も多いです。保健所によって国の基準に合っているか審査があり、審査に通って初めて開業できます。
準備4:内装業者を選んで開業に備える
開業資金が確保できて、物件も決まったら、次は内装について考えていきます。整骨院の内装に対して、法律で求められているのは以下の点です。
管轄する保健所によっても差がありますが、上記の点は基本的な内容になります。物件を選ぶ際に確認しておきたい点もありますし、内装工事の際に考慮しておく点もあります。
上記の法律で求められている点をクリアーするように、内装デザインを考えていきます。また物件のスペースが、自分が希望するレイアウトやスタイルに十分な広さかを確認します。
ベッドの設置場所や台数、さらに受付の設置場所や向きなども考慮します。スタッフの導線や案内のしやすさにも影響する部分ですので、じっくりと検討してからレイアウトを決めるようにしましょう。
整骨院の内装工事では、他にも独自のチェックポイントがあります。
床や壁の強度
ローラーベッドは重量があるので、床や壁の強度と防音を考えます。
導線を考えた水回り
プライバシーに配慮した水回りになっているかを確認します。水回りは後で変更すると費用がかかるので、後で変更しなくて済むような内装デザインを考えましょう。
換気位置の確認
法律で求められている外気開放ができない場合には、換気扇の設置が求められます。
バリアフリー
高齢者の来院を考えると、できるだけバリアフリー化しておきたいところです。特に上階に整骨院がある場合は、エレベーターなどを使用して車いすにも対応できるか考えておくと良いでしょう。
看板設置の可否
看板を作成して設置する際に、看板を設置できる場所があるかを不動産屋に確認します。管理組合の同意を求められたり、環境規制がある可能性もあります。
内装のチェックポイント
これらの内装のチェックポイントを踏まえて、デザインや設計を行ってくれる内装業者を選ばなければなりません。過去に整骨院の施工実績があり、見積書が解りやすい業者であれば、信頼できる業者といえるでしょう。
打ち合わせの際にしっかりとこちらの意向を伝え、見積書や工事内容について分からない点はちゃんと質問し、納得してから契約するようにすれば、内装工事で失敗することがなくなります。
準備5:集客方法とスタッフの採用方法
整骨院の内装が決まったら、集客の準備を始めて開業に備えます。今はインターネットを通して集客することが効果的なので、ホームページやブログの作成は避けて通れません。
ホームページ作成に関する知識がない方では、自分のホームページを検索結果で上位に表示して、効果的に集客することは難しいです。初期費用はかかりますが、ホームページ製作会社に依頼する方が良いでしょう。
新規開業の際は、チラシなどの紙媒体の広告も有効です。その地域の方に新しく開業したことを知らせるのに、紙媒体は今でも有効です。
その他にも、地域の方に整骨院の存在を知ってもらうために、地域活動への参加を検討してみてはいかがでしょうか?
清掃活動やその他の自治体の活動に参加することも、整骨院のイメージアップにつながります。これも宣伝方法の1つと割り切って、積極的に参加するべきでしょう。
小さな整骨院であれば、最初は1人で施術し、1人で受付や会計を行う可能性もあります。しかし徐々に患者さんが増えてくれば、事務作業を自分1人で行うことが難しくなってくることも想定されます。
そのため、事務スタッフや補助スタッフを雇うことも考えられます。求人情報誌や求人サイトに広告を出すことは、今でも有効な方法です。
柔道整復師や鍼灸師の資格がある方を募集する場合は、人材派遣会社を利用する方法もあります。面接時に注意したい点は、給与や労働条件などのトラブルになりかねない条件はメモを取ることです。
整骨院は基本的に人と接する仕事ですので、接客やコミュニケーション能力がある人材を優先的に採用しましょう。
経験者か未経験者かによって教育する点は異なりますが、コミュニケーションの取り方をよく見て、定期的に管理していくことが大切です。スタッフが良く教育されていれば、患者さんも安心して来院できます。
準備6:整骨院の開業前にチェックすること
ここまでくれば、開業まであと少しです。さらにスムーズに開業するために、最後に以下の点を確認しておきましょう。
運転資金の確認
まずは経費が十分にあるかを確認し、特に運転資金についてチェックします。開業してからしばらくは、予想していたより患者さんが少ない可能性もあります。
しばらくは患者さんが少なくても診療できるように、運転資金を残しておかなければなりません。1年分とは言いませんが、患者さんがいなくても診療できるように、2~3ヶ月分は運転資金を残しておきましょう。
同業者への対応
整骨院は、最近は過剰供給な状態にあります。もしかすると開業を予定している地域にも、すでに他の整骨院がある可能性もあります。
その場合は最初に挨拶を済ませておくと、同業者からのクレームを避けられます。同業者ということで、相手が警戒して対応してもらえないことも考えられますが、開業する時が1番挨拶をするのに適しています。
もしその整骨院の先生が、自分が所属している団体とは別の団体に所属している場合は、技術情報の交換なども期待できます。
患者さんのクレーム
患者さんから、施術方法に関してクレームが来る可能性もあります。ただ揉むだけの施術はしないと決めていても、患者さんがただ揉むことを期待する場合に、このようなクレームが起きます。
治療院の理念に関係するので、ただ話を聞くだけでなく対策を練っておく必要があります。こうしたクレームであれば、対応は複雑ではありませんが、治療をした後に痛くなったなどのクレームは少し厄介です。
しかし多くのクレームは、こちらから行動を起こすことで解決が早まることが多いので、院長自らの行動力が求められます。金銭目当てなどのクレームの場合は、断固たる態度もクレーム解決に役立ちます。
あらかじめクレームへの対処法をまとめていれば、いざという時にも動揺しません。日頃からどのように患者さんと向き合っていくかを考えておきましょう。
まとめ
整骨院を開業する際にも、多くの準備が求められます。昔に比べて多くの整骨院がある今日では、上記に挙げたような周到な準備が必要です。
決して楽な道のりではありませんが、自分が他の方の痛みを和らげられるという満足感は、他の何物にも代えがたいものでしょう。数々の壁を乗り越えて、自分が理想とする整骨院を開業しましょう。
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